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Former Korean comfort woman Lee Yong-soo (center), lawyer Lee Sang-hee (left) and others hold a press conference on November 23 in Seoul Former Korean comfort woman Lee Yong-soo (center), lawyer Lee Sang-hee (left) and others hold a press conference on November 23rd, Seoul (©Kyodo News)
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耳を疑う不当な判決である。韓国ソウル高裁で元慰安婦らが日本政府に求めた損害賠償請求が認められた。
慰安婦について「日本政府による強制的な拉致行為」と決めつけた。事実無根で、断じて認められない。
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訴訟は、韓国の元慰安婦や遺族計16人が日本政府を相手取り、1人当たり2億ウォン(約2300万円)の損害賠償を求めた。
国家は外国の裁判権に服さないとされる国際法上の「主権免除の原則」に基づき、日本政府は訴訟に応じず審理に参加していない。当然のことである。
1審ソウル中央地裁は、主権免除の原則から、外国政府への賠償請求は訴訟の要件を満たさないと判断し、原告の訴えを却下していた。これがまっとうな判断である。
ところが2審ソウル高裁は「違法行為に対しては主権免除を認めない国際的な慣習が存在する」として請求全額を支払うよう日本政府に命じた。
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拉致のような違法行為に主権免除の原則は適用できない、というのだろうが、事実を歪(ゆが)めてはならない。調査や実証的研究で、女性を組織的に連れ去って慰安婦にしたという「強制連行」説は否定されている。
そもそも日韓のあらゆる請求権問題は1965年の両国国交正常化に伴う請求権・経済協力協定で解決済みだ。
さらに日韓両国政府は2015年に慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認しているのを忘れてはならない。元慰安婦らの不満があるなら韓国内で解決すべき問題だ。
原告勝訴が確定すれば、日本政府の韓国内の資産が差し押さえなどの強制執行の対象となるおそれがある。それこそ日本の国家主権への侵害である。
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日本政府はソウル高裁判決について「断じて受け入れられない」と韓国に抗議し、上川陽子外相は「韓国に対し、国家として自らの責任で直ちに国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講ずることを強く求める」との談話を出した。
11月25日からの訪韓で外相会談の際には、韓国側の実効性ある対応を強く求めるべきだ。
韓国が、事実や国際法を無視した司法の暴走を許すなら、責任ある国家とはいえまい。容認すれば韓国への不信が国際社会に広がるばかりである。
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2023年11月25日付産経新聞【主張】を転載しています